トリプルネガティブ
乳がんと診断されると、がんの大きさやリンパ節への転移があるか、また肺や肝臓、骨などへの転移があるかどうかで、病気の進行度=ステージ(病期)が決まります。
これはほかの固形がんと同じですが、乳がんではさらに、患者さんそれぞれのがん組織のエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の3つを調べます。
先日病理学のブログを書きましたが、これらを調べるのも病理学検査なのです。
これらは、今後の再発のリスクを予測し、再発を抑えるために、どのような治療を行うかを決定する目的で、標準的に行われる検査です。
ホルモン受容体のある、なしと、HER2が陽性か陰性か、によって4つのサブタイプに分類します。
それぞれの性質をもつことがわかると、がんの増殖を抑えるターゲットが明らかになり、効果的な治療が期待できます。
ホルモン受容体が陽性なら、抗エストロゲン剤やアロマターゼ阻害剤を使用し、HER2陽性ならば、HER2阻害剤を使います。
4つのサブタイプの中で、ホルモン受容体もHER2もないタイプを「トリプルネガティブ」と呼びます。
乳がん全体の15%程度とされています。
トリプルネガティブは、ほかのタイプと比較すると、再発リスクが高いのですが、ホルモンもHER2も陰性なので、明確な治療のターゲットがなく、再発予防の治療も再発時の治療も、抗がん剤のみでした。
しかし、がんの薬物治療の開発は目覚ましいものがあり、日々研究され、次々に新しい、より効果の期待できる薬剤が保険で使えるようになっています。
PARP阻害剤と呼ばれる、オラパリブ、ルカパリブ。
免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-L1抗体も承認されました。
今後、AKT阻害薬が承認される見込みです。
乳がんになることを完全に予防することは、まだできませんが、治療薬はどんどん開発され、そう遠くない将来に「治る病気」になるかもしれません。
今できることは、セルフチェックの習慣を身につけることと、年1回の乳がん検診を継続して受けることです。
みなさん、今年の検診の計画を立ててくださいね。
Akiko