抗生物質の話

antibiotics

昨日のAIR-G brilliant days Fでは、抗生物質のお話をしました。 

冬になると、気温の低下、空気の乾燥などにより、風邪をひきやすくなる季節です。

のどの痛み、鼻水やくしゃみ、咳や痰、熱や頭痛、倦怠感など、風邪の症状は多彩です。 

一般の内科診療では「風邪をひいたので、抗生物質を処方してほしい」と診察を受けに来る患者さんがいます。

何にでも効くと思われがちですが、抗生物質は細菌にしか効果がありません。 

抗生物質は細菌を殺菌する、または細菌の増殖を抑える薬で、抗菌薬というものです。

感染症の原因となるものは、細菌のほかにウイルスや真菌があり、それぞれに効果のある抗ウイルス薬や抗真菌薬をまとめて、抗微生物薬とも呼びます。 

風邪とはどのような病態かというと、急性の気道感染症です。

その中にはいわゆるかぜ(感冒)、急性鼻副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性気管支炎を含みます。 

急性の気道感染症の原因になっているのは、9割ほどがライノウイルスと新型ではないコロナウィルスです。

細菌が関連している風邪はとても少なく、急性咽頭炎の原因となるA群β溶血性連鎖球菌や、急性気管支炎のマイコプラズマ、クラミジアが主なものです。 

ほとんどの風邪症状の原因になっているのはウイルスですから、風邪の症状を抗生物質で改善させることはできません。 

早く治る気がするから、処方してくれても良いのでは?と思う方もいるかもしれませんが、抗微生物薬を使うことで、通常の菌の中から耐性菌という、これまで効果のあった薬が効かなくなるものが発生してきます。 

今後、抗微生物薬をむやみに使うことを続けると、2050年には、耐性菌による感染症よって世界で1000万人が命を落とすことになるだろうという試算があります。 

そのために抗生物質を正しく使うためのガイドラインが作成されています。 

ガイドラインでは、 

〇 感冒いわゆる風邪には抗菌薬を投与しない 

〇 成人の軽症の気道感染症には抗菌薬を投与しない 

〇 溶連菌が検出された咽頭炎のみ、決められた抗菌薬を投与する 

ということが推奨されています。 

これらは、乳幼児や小児、心臓や肺に疾患を持つ人については除外されます。 

医師はもちろん、このガイドラインに従って正しく抗菌薬を使う義務がありますが、みなさんにもぜひ理解してほしいと思います。 

 

Akiko 

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